なぜ、今、日本でDXが議論されるのか 〜 注27

公開: 2021年4月27日

更新: 2021年5月23日

注27. 新自由主義

米国社会では、古くから政府による社会への介入は最小限に止めるべきとする考えがある。これは、リバタリアニズムと呼ばれる思想である。政府が、外交や軍事などを行うことは認めるが、税金を課して国民全体の福祉の向上に当てたり、子供達の教育に投資することは、過度な政府の介入であるとする。国民の多くは、自分自身の活動に責任をもち、その結果も自己責任とすべきであると考える。

程度の差はあっても、この基本的な思想に賛同した経済学者は少なくない。その経済学者の思想を新自由主義と呼ぶ。ノーベル経済学賞を受賞したフリードマンは、有名である。彼は、経済活動に対する政府の規制は、可能な限り排除すべきであると唱えた。個々の企業が、自由な市場で、規制のない競争を行い、市場が求めているモノやサービスを販売するべきであるとした。

従来の考えでは、市場で多くの利益を得た企業は、多額の税金を政府に納入し、政府はそのようにして集めた資金を利用して、貧しい人々の生活を援助することが国の役割の一つであった。しかし、新自由主義者は、多大な収益を得た人間や企業は、その収益はその人または組織の財産であり、国家に税として納入する必要はないと主張する。自分達の収益の一部を貧しい人々に分け与えるのであれば、それは個人の善意として自由に行えば良いと主張する。

この新自由主義的な考え方が行き過ぎたため、資本主義が、「強欲資本主義」を生んだとする批判がある。特に、リーマンブラザースの破たんは、金融機関はお金を得るためであれば、その方法は何でも良いとする考えは、行きすぎていると指摘されている。また、税金を逃れるために、大企業が税率の低い国に本社を移して、法的に納税額を抑制しようとするなど、倫理的な議論を巻き起こしている。

参考になる読み物

これからの正義のはなしをしよう、マイケル・サンデル、早川書房、2010